はじめに:治療か、それとも破壊か
「静かになりました」
1940年代、ある精神科医が患者のロボトミー手術を終えた後にそう言ったという記録が残っています。騒いでいた患者は確かに落ち着き、暴力行為も止みました。しかし、その表情からは光が消え、言葉も感情も見えなくなっていたのです。
この手術の名は「ロボトミー」。一時期、“奇跡の治療法”として世界中で推奨されましたが、やがてその影には深い倫理的問題と取り返しのつかない代償が潜んでいたことが明らかになります。
脳を切れば心が治る?──ロボトミーの誕生
1935年、ポルトガルの神経科医エガス・モニスは、重度の精神疾患患者の治療法として「前頭葉白質切截術」を提案しました。
前頭葉と視床をつなぐ白質を切断することで、過剰な感情や妄想を抑制しようとしたのです。
翌年、彼はこの手術を実際に患者に施し、いくつかのケースで症状の軽減が見られたと報告しました。
この功績により、モニスは1949年にノーベル生理学・医学賞を受賞します。
しかし、その裏では副作用や人格変化といった問題も同時に報告されていました。
精神疾患に対する根治療法が求められていた時代、ロボトミーは希望の光のように見えたのです。
アメリカでの普及と“効率化”された手術
アメリカでは精神科医ウォルター・フリーマンがこの手術に強い関心を示し、「経眼窩ロボトミー」という新たな手法を開発します。
これは目の奥からアイスピックのような器具を挿入し、脳の白質を損傷させるというもので、全身麻酔も手術室も不要でした。
彼は“ロボトミーバスツアー”と称し、自ら車で病院を回りながら手術を施していきました。
1940〜50年代のアメリカでは4万件以上のロボトミー手術が行われ、精神病院や家庭の中で「静けさ」が戻ったと評価されました。
しかしその静けさは、多くの場合、感情と人間性の喪失を意味していたのです。
日本でも行われていたロボトミー
日本でも、1940年代後半から1950年代にかけてロボトミーは導入されました。
特に統合失調症の患者に対して、「治療」という名目で行われました。
ある記録によれば、施設内で暴れる患者、叫び続ける患者に対し、ロボトミーは「最後の手段」として施されていました。
家族の同意のみで実施されることもあり、本人の意思は問われませんでした。
手術を受けた患者は確かにおとなしくなりましたが、同時に強い無気力、感情の鈍化、社会的孤立が進んでいきました。
ある元患者はこう語っています。
「泣きたくても泣けない。怒りたいのに怒れない。何かを失ったとしか言いようがない」
ロボトミーが残した倫理的問い
ロボトミーは数千、数万の患者に対して行われましたが、その多くは回復ではなく、破壊と沈黙をもたらしました。
- 本人の同意は得られていたのか?
- 副作用について、正確な説明があったのか?
- 患者を「管理する手段」として利用されていなかったか?
こうした疑問が噴出し、1950年代後半には抗精神病薬の登場とともにロボトミーは急速に姿を消していきます。
しかし、それは単なる医療の進歩ではなく、深い反省の結果でもあったのです。
現代とロボトミー──その影はまだ残る
現代の精神医療には、かつてのロボトミーの教訓が色濃く影を落としています。
たとえば、現在でも行われている「脳深部刺激療法(DBS)」は、精密かつ可逆的な処置ですが、ロボトミーの歴史を踏まえ、倫理的手続きと同意の確保が徹底されています。
また、精神疾患に対する社会的な偏見や隔離の問題も、ロボトミーの歴史を理解することで再考する必要があります。
「騒がないこと」が「治癒」なのか? 「従順になること」が「回復」なのか?
この問いは、今も生き続けています。
心に触れるということ
人間には喜怒哀楽の感情があります。
生きていれば楽しいことや嬉しいこともありますし、苦しいこともあります。
そういった感情をありありと感じることが人間らしさであると私は思います。
当たり前のように感じることも感情の経験は人生にとって、とても貴重なものです。
何か問題が起きたとき、つい「すぐにでも解決したい」と考えてしまうのは人間の自然な反応です。
しかし、その場しのぎの安易な対処が、取り返しのつかない結果を生むこともあります。
ロボトミーという言葉が、ただの過去の出来事として風化しないように。
それは今なお、過去から未来への警鐘なのかもしれません。
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